新基準ΔL等級で性能表示

推定L等級の問題

  • 従来多くのカタログ等に表記されてきた「推定L等級」は、実験室で最良の条件下による試験結果から算出した推定値であり、多くの場合実建物では再現しません。

    その理由として、

    ・最近の実建物のスラブ厚は200mm以上が多いが、実験室のスラブ厚は、200mmに比較してよりよい低減量が得られる150mm厚で行われていた。(図1)

    ・実験室での測定条件と、実建物の納まりが同じはでない。特に際根太を使用すると、壁からの伝播がより大きくなる。(図2)

    ・実建物では、防音用の支持脚と音を伝えやすい補強用の支持脚が併用されているが、カタログ値は防音用の支持脚のみのデータが用いられている。

    ・上記に加え、床先行工法の場合、間仕切り壁の荷重が二重床にかかり、それを支える補強ゴムがより音を伝えやすくなっている。(図3)

  • 推定L等級問題点画像

「推定L等級」の算出方法に関して

例えば、「推定L等級」が重量床衝撃音でLH-40の製品である場合、実験室でLH-40の空間性能だったということではありません。

実験室で得られた低減量を「推定L等級」を算出するための標準的な床衝撃音レベルから引いた数値を読み取った値が「推定L等級」です。

ここで使用する標準的な床衝撃音レベルの想定条件(スラブ厚、面積等)が、現在では一般的な条件ではなくなってきており、実建物での再現性が低い原因の1つとなっています。

推定L等級の算出方法画像

まだ使われ続ける「推定L等級」

「推定L等級」は、ある限られた条件下での性能を表す指標であり、必ずしも実建物の空間性能に対応するものではないにもかかわらず、実建物での保証値であるかのような誤解を招いてきました。

このような問題点から、「推定L等級」の評価は平成19年に廃止となっています。

しかし、「推定L等級」が現在でもカタログに表記されている場合があり、一部では、廃止の事実を知らなかったり、「今まで使用してきた値だから特に問題ないだろう」といった認識の低さから未だに選択基準とされ、現場で音が止まらない原因となっています。

新たな表記規格と表記方法

従来、カタログ等に表示されてきた「推定L等級」は、その値が実建物に対応するものではないにもかかわらず、実建物の保証値であるかのような誤解を招いてきました。

また、平成19年に、実建物での性能への対応性を向上させることなどを目的として床衝撃音低減性能の新しい測定方法を規定したJIS規格の改正が行われました。

こうした背景のもと、床関係の工業界においても、床材の供給者のみならず設計者・施工者・使用者などの関係者にも理解しやすい、新たな床衝撃音低減性能の等級表示を導入しようとする取り組みが行われてきました。

現在、床材関係の3工業会より要請を受けて財団法人日本総合建築試験所に設置された検討委員会が「床材の床衝撃音低減性能の表現方法に関する検討委員会報告書」を公表し、その中に示された「等級表記指針」に基づいた「ΔL等級表記」に切り替わり、公的試験機関での「推定L等級表記」は廃止されました。

●新たな試験規格
カテゴリーⅡ
乾式二重床などの場合

  • 実験室

    スラブ厚20㎡、試験面積は10㎡、床板200mm厚の壁式構造実大実験棟。

    試験体

    各部の納まりは、実現場での施工方法・仕様(際根太の有無、幅木の仕様、接着剤の使用等)を再現する必要がある。

    衝撃源

    軽量は従来のタッピングマシンを用いる。

    重量はタイヤ衝撃源(特性1)とゴムボール(特性2)の2種類。

    但し、現在低減性能(ΔL)等級が決められているのは旧来のタイヤ衝撃源のみ。

  • ΔL等級画像

●新たな表記方法
カテゴリーⅡ
乾式二重床などの場合

低減量を表すΔ(デルタ)とカテゴリーを表すⅡを付します。

軽量床衝撃音低減性能
ΔLL(Ⅱ)-5~ΔLL(Ⅱ)-1

重量床衝撃音低減性能
ΔLH(Ⅱ)-4~ΔLH(Ⅱ)-1

推定L等級の算出方法画像

Δ等級による選択と注意点

Δ等級は、一定水準で施工条件を標準化した試験であり、低減量を用いた製品単体の性能を表す方法であることから、製品相互の比較が容易にできます。

但し、低減量といいながらも、上記等級下限値で赤字で示した部分(マイナスの値)は、床構造が音を増幅してしまうことを意味していることから、Δ等級のみでの判断には注意が必要です。

特に重量床衝撃音は最高級であってもマイナスの値となっていますが、この値は下限値であるため、同じ等級でも製品によりその内容は違ってきます。

子育て世代を対象とした集合住宅等の重量床衝撃音対策では、Δ等級と共にカタログ等で提供される低減量にマイナスが有るか無いかを参考にして、比較・選択することが重要です。